2023年03月08日

「出産・子育て応援給付金」に関する調査

2023年1月よりスタートの「出産・子育て応援給付金」。「支給金額が少ない」と回答した方は約半数。子育て世代の継続的な支援の声は依然として多い。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2022年の出生数は統計開始以来初めて80万人を下回り、過去最少となりました。昨今の物価の上昇による家計への負担も急増し、妊娠を躊躇する方も増えていると推測されます。
そのような中、政府は2023年1月より「出産・子育て応援給付金」をスタートさせました。これは、妊娠届出時と出産時にそれぞれ5万円ずつ支給されるものです。(支給方法は自治体により異なります。)
10万円の給付金により子育て世代の負担はどれくらい軽減されるのでしょうか。
2023年1月10日~同年1月18日の間、全国347名の妊娠中または産後の女性へ2023年1月にスタートしました「出産・子育て応援給付金10万円」について調査を実施しました。

※ハーゼスト株式会社が提供する「Babyプラスアプリ」によるweb調査

妊娠・出産により約9割が経済的な心配を抱えており、「自身の収入減」理由が最多


給付金額10万円について、約半数が「少ない」と回答


経済的支援として求める第1位は「高校・大学等の教育支援」


調査結果の詳細は次の通りです。

妊娠、出産により、経済的な心配をした方は、約9割

約9割が「経済的な心配」があり、心配の理由の第1位は「妊娠出産により自身の収入が減るため」、第2位は「子どもの将来に使う教育資金が必要なため」、第3位は「物価が上がったため」。
共働き世帯も増えた現代では、妊娠出産後も働き続ける女性が以前に比べ増えておりますが、妊娠出産によるキャリアの心配だけでなく自身の収入の減少による家計への影響も大きいと言えます。

86.7%が10万円クーポンを「役に立つ」と評価する一方、一時的な支援では足りないという声も

「10万円クーポンは役に立ちますか?」の問いに対し、「とても役に立つ」52.6%、「役に立つ」34.1%と、合計86.7%が「クーポンは役に立つ」と回答。「役に立つ」と回答した方からは収入減や子供用品が高額なため助かるという意見もありますが、「役に立たない」と回答した方からは一時的な支援より成人するまでの継続的な支援を要望される声が目立ちました。

自由回答(一部抜粋)

【役に立つと回答】

・ 自営なので会社員のように休業手当て等がないのでとても助かります。(28歳 自営業)
・ 子供用品は何かとお金がかかるので10万クーポンを使って少しでも出費を抑えられるのは助かる。(21歳 パート)
・ 10万円分の支給があれば新生児期のおむつ代やミルク代などかなり助けられるから。(28歳 専業主婦)
・ 地方の車必須地域に住んでいるため、赤ちゃんを迎える前にチャイルドシートが必要であるが、費用がかなりかかるため。(41歳 専業主婦)


【役に立たないと回答】

・ 成人するまでの教育費無償化などの方がよっぽど支援になる気がする(32歳 会社員)
・ 赤ちゃんのうちはあまりお金が掛からないため、もう少し上の年齢のときに支援をしてもらいたいから。(31歳 専門職)
・ 一時的なものではその場しのぎにしかならない。不安はなくならない。(28歳 会社員)
・ 産婦人科が出産費用の値上げをしたため、値上げ分の補填にしかならなかった。(39歳 専業主婦)

出産と育児の準備金として、10万円では不十分か

「10万円の支給金額についてどう思いますか。」の問いに対し、「適切」が30.1%、「少ない」が47.4%と回答。 「適切」と回答された方からは「子どものいない世帯や財政を考えると妥当」「最低限の準備としては十分」という意見がありました。一方、「少ない」と回答された方からは「一時的な支援では少子化対策に繋がらない」「出産準備品を全て揃えることはできない」との意見が多数。ベビーカーやチャイルドシートなど価格の高い育児用品を含めると、全ては10万円で賄うには足りないと思われる方が多いようです。

自由回答(一部抜粋)

【適切と回答】

・ これ以上の支援は過剰であり、独身または子なし世帯の不満が大きくなると思う。(38歳 専門職)
・ 出産準備として考えれば適正だと思う。その後の育児まで考えると少ないですが。(41歳 専業主婦)
・ 出産費用や消耗品は別で、赤ちゃん時期に必要なものを購入するには十分な金額だと思います。(27歳 専業主婦)
・ 多すぎても財政難になるのではないかと思うので、この金額がちょうどいい。(29歳 公務員)


【少ないと回答】

・ 個人的には妥当な額だと思うが、これで少子化対策になるかと言われると疑問に思う(33歳 専業主婦)
・ 一時的な支援にすぎない。日本の経済、物価高騰で子育てが苦しいと当事者になって強く感じている。(26歳 専業主婦)
・ 出産準備品を全て賄うには足りない。本当に必要最低限で安価重視の物でしか揃えられないと思う。(27歳 会社員)
・ 一時的な10万円では継続して子育てするには少ない。物価も上がっているのでその一時的な補填にしかならないと感じる。(34歳 会社員)

キャッシュレスは進むも、やはり「現金」が根強い人気

自治体により現金支給や電子クーポンなど支給方法が異なります。「どの支給でも可能だったと想定し、一つのみ選べるとしたらどの支給方法を選びますか。」の問いに対し、「現金」が82.7%、続いて「電子クーポン」が「7.2%」という回答でした。 QRコード決済も当たり前の世の中になりましたが、使用に制限なく各家庭において使い道を選びやすい「現金」を希望される方が多い結果に。

妊娠中と産後の2回に分けての支給。分けての申請は面倒か。意見は様々・・・

「出産・子育て応援給付金」は妊娠届出時と出産時にそれぞれ5万円ずつ支給されます。 「支給タイミングについてどう思いますか?」の問いに「適切」が38.2%、「適切ではない」が29.2%、「分からない」が32.7%と回答。 「適切」と回答された方からは「妊娠中、産後と計画的に必要なもをの購入できる」といった意見がありましたが、「適切ではない」と回答された方からは「何度も申請するのが面倒」「安定期に必要なものを購入するため産前が良い」といった意見もありました。

自由回答(一部抜粋)

【適切と回答】

・ 妊娠時には出産準備、出産後は育児で必要なものを購入できるから。 (32歳 専業主婦)
・ 不妊治療をしていた場合、妊娠が分かった時点で 5万円分もらえるのは、ありがたい。(29歳 専門職)
・ 妊娠して無事に生まれるかわからないため、妊娠時と出産時に分かれているのは良いと思う(26歳 会社員)
・ 産前の準備と、産後に実際赤ちゃんと暮らしてから必要になる分用に計画的に使えるから(32歳 パート)


【適切ではないと回答】

・ 妊娠届提出のはまだ安定期にも入ってないので早すぎるのではないかと思う。(31歳 会社員)
・ 何度も申請を出さなければいけない事が手間。仕事と子育てをしているので時間があまりないため。(35歳 会社員)
・ 必要物品を購入するのは産後の方が多い、産後すぐには育児で買い物にもいけないことが多い(36歳 専門職)
・ 出産前の安定期に準備をはじめるので、その頃までに貰えた方がいいと思う。出産時は、手続きや子育てでそれどころではないので。(41歳 会社員)

使い道の第1位は、生まれてくる子供のため。生活費と回答する方も

妊娠届時の5万円の使い道の第1位は「生まれてくる子供の用品」、第2位は「マタニティ用品」、第3位は「妊婦検診費用」という結果になりました。 出産時の5万円の使い道の第1位は妊娠届時と同様、「生まれた子供の用品」。続いて第2位は「生活費」。妊娠出産による収入減や物価上昇により、逼迫する家計の足しにする方も一定数いるようです。

最もかかる教育費用での支援を求める声が最多

今回の給付は妊娠および出産時の支援となりますが、出産してようやく長い長い子育て期間が始まります。「子育て世代に対し、経済的支援として、他にどのような公的支援があるとよいと思いますか。」の問いに対し、第1位は「高校・大学までの教育費用」、第2位は「保育園無償化」、第3位は「育児用品の助成」という結果でした。最も費用のかかる高校、大学の教育面における支援が求められています。

自由回答(一部抜粋)

・ 1番お金がかかるのは大学のタイミング。なので出産時よりも、成人に近いタイミングで経済的、教育的支援があるとよい。(35歳 会社員)
・ 我が家の世帯収入は高校授業の無料化に当てはまらず、何の恩恵も受けられないまま、高額な税金を納めなければならないのは不平等に感じます。(34歳 公務員)
・ 認証保育園も無償化の対象にしてほしいです!(39歳 会社員)
・無償化が進んだとはいえ月々フルタイムで標準 +延長料金を払ってたら高くなる為(32歳 会社員)
・ 食品や子供用品等全て物価が高くなってきて給与も上がる訳では無いので生活の安定がありません 毎月何かと支援をしてほしい (21歳 パート)
・ 一時的ではなく継続的な支援がない限り、出産を躊躇する人は多いと思う。(28歳 専業主婦)
・ 市からの赤ちゃん用品のレンタルが無料であるといい。(39歳 会社員)
・オムツなど育児の必需品を、たまにでも無料で貰えたりしたら嬉しい。 (30歳 保育士)
・ 児童手当を増やすなど収入が減っても生活できるようにしてほしいです。(28歳 公務員)
・ 妊婦健診における任意検査の代金や、分娩費用については、全額を公的支援にしてもらえると助かります。(41歳 専業主婦)
・ 住んでいる地域に左右されることなく国で、一時的な給付より継続的支援をしてほしい(41歳 会社員)

働きながら子育てするための、国をあげての環境整備が急務か

「子育て世代に対し、経済的支援以外にどのような公的支援があるとよいと思いますか。」の問いに対し、第1位は「子供向け遊び場や施設」第2位は「保育園(入りやすさ・環境)」、第3位は「仕事とは両立支援」という結果でした。子供が安心して過ごすことのできる施設の整備はもちろんですが、長引く不況のなか出産後も働きたいという母親が増え、仕事との両立支援は急務と言えます。保育園に入ることさえできなければ働くこともできず、保育園に入って働くことができても仕事と子育てとの両立は想像以上に大変です。男性の育児参加、子育てをしながらの女性のキャリアアップ、子どもの急病や学校行事にも対応可能な体制など、どの会社にとっても簡単なものではないからこそ、国をあげての整備が急務と言えるのではないでしょうか。

自由回答(一部抜粋)

・ ベビーカーが使いやすい施設整備。男性トイレにもおむつ交換台を設置してほしい(32歳 専業主婦)
・ 公園が無い地域に遊具のある公園ができること。(39歳 専業主婦)
・ 保育園や幼稚園の先生たちの待遇改善。共働きが増えている中で安心して子どもを預けられる場所の増加は急務だと思う。 人数に対しての先生の数が足りないし、給与ももっとしっかり払うべき。(35歳 会社員)
・ 保育園は希望すれば必ず入れるようなシステム。保育園の延長費がかからなければ、時短で働く必要がなくなる。(34歳 会社員)
・ 保育園での行事や装飾は、必要無ければ行わずに保育士さんたちの負担を減らし、働きやすい環境を整えるべき(29歳 専門職)
・ 抜本的な働き方改革。 保育園は夕方、土曜日、夏休みなどの長期休みも保育があるが、小学生になった時の自分の働き方にイメージが持てません。(36歳 会社員)
・ 働きやすい環境、制度を企業主体ではなく行政が主体となって作ってほしい。 そうでなければ大企業ばかり制度が良くなって、ほとんどの人は恩恵を受けられない(36歳 専業主婦)
・ 妊娠を望む女性を企業が応援することで、企業にメリットがある制度の導入。 (28歳 会社員)
・ 子育てするにあたり、すぐに誰かの手を借りれるようになってほしい(29歳 専業主婦)
・ 子育て世代に対する社会の雰囲気を変える何か政策があると嬉しい (37歳 パート)

まとめ

約9割の方が、妊娠出産を機に経済的な心配を抱えており、物価が上がる中で出産により自身の収入が減少するといった現時点における心配と、将来的な子どもの教育資金を心配する意見が多くありました。10万円では出産準備品を全て賄うには不足し、あくまで一時的な支援となり子育て世代からは継続的な支援を求む声が多数あります。 子育ては妊娠出産時期だけでなく、成人するまで長く続くものです。 子どもを育てながら安心して働ける環境の整備や、高校や大学など費用のかさむ教育費用に対する支援など、国をあげての総合的な支援が求められます。 安心して子供を育てることができる社会の実現には、まだまだ多くの課題があると言えます。







調査概要:「出産・子育て応援給付金」に関する調査
調査主体:一般社団法人マザーアンドチャイルド協会
調査方法:ハーゼスト株式会社が提供する「Babyプラスアプリ」によるWeb調査
調査期間:2023年1月10日〜同年1月18日
回答者数:妊娠中または出産後の女性347名