2023年04月21日

「子育て世代が思う少子化」に関する調査​

子育て世代が思う「少子化」とは?
「産みたいけど産めない」現状であり、家計的な問題にも、子どもを抱えながら働く環境にも、日本の将来にも大きな不安を抱いている。
少子化対策には、経済的な支援をはじめとする時代に合わせた総合的かつ抜本的な取組が必要。

厚生労働省の発表によると、令和4年度の出生数は、79万9,728人で1899年の統計開始以来初めて80万人を下回り、過去最少となりました。
国は少子化対策として新たな取組を進める方針を示していますが、コロナ禍の影響、経済の低迷により、出産を控える所謂「産み控え」をされる世帯も少なくないのではないでしょうか。​
子育て世代が思う「少子化」について、社団法人マザーアンドチャイルド協会は、2023年2月3日~同年2月10日の間、全国1353名の妊娠中または産後の女性を対象に調査を実施しました。​​

※ハーゼスト株式会社が提供する「Babyプラスアプリ」によるweb調査

約4割が産みたくても産めない現状


少子化の1番の理由は、経済的な不安、次に仕事と家庭の両立困難


子育て世代に1番必要な取組は「児童手当などの経済的支援の強化」


調査結果の詳細は次の通りです。

4割が「計画している子供の人数が理想より少ない」=産みたいけど産めない と回答

各世帯において、計画する子供の人数と理想の人数にどれほど違いがあるのでしょうか。
「計画人数の方が理想人数より少ない」と回答した方は約4割。10世帯に4世帯の家庭において、理想はもっと多くの子供が欲しいが何らかの事情で叶わなかったと言えます。また、「計画する子供の人数」は、2人が最多。注視したい点が、1人と回答した方は全体の2割強もいることです。
一方、「理想とする子供の人数」は、3人が最多。4人以上希望する方も一定数おり、計画と理想に乖離があることが分かります。

計画している子供の人数が理想より少ない理由は、経済的な理由が最多。
経済的支援、仕事との両立支援が少子化対策に不可欠。

「計画している人数が理想より少ない理由」の問いに対し、第1位が「経済的な理由」、第2位が「仕事と家庭の両立のため」、第3位が「自分(パートナー含む)の年齢が高齢のため」でした。
政府による様々な子育て世代への支援はありますが、理想と現実のギャップを埋めるための支援としては不十分であり、子育て世帯からは金銭面、環境面においての不安な声が多く寄せられております。

自由回答(一部抜粋)

・不妊治療で妊娠しました。不妊治療のために仕事を変えて年収が下がり、つわりで仕事を退職せざるを得ない状況になりました。子供は2~3人欲しいと思っていましたが、不妊治療をもう一度…と考えると経済的な負担が大きいこと、妊娠悪阻で仕事ができず、また退職になるかもしれないと思うと、経済的に余裕がなく2人目は考えられません。(33歳 休職中)​
・仕事と家庭の両立をしていると子供との時間が削れたり、自分自身に余裕がなくなったりと子育てに充てる時間が減ってしまう。 社会復帰や職場復帰しやすい環境が日本には整っていない。 (35歳 専業主婦)​
・どんどん物価高になる中、教育費の捻出が困難と感じる。やりたいことをやらせてあげられるための子供の人数は2人が限度。 そんなに何度も産休育休を取ることにも抵抗がある。(34歳 会社員)​
・妊娠まで、妊娠中、出産、育児全てにお金がかかることから、自分たちの生活や老後のことで手一杯な状態を考えると現実的に子どもは欲しいだけ産むという選択はできない(27歳 会社員)​
・高齢出産のため体力の不安があり、更に数年内に2人目となると現実的に考えられない。 経済的・今後の日本経済的に、1人の方が育児教育にお金をかけてあげられるから。(37歳 会社員)​
・自分自身、仕事に専念してきたため結婚を考えるのがおそくなった。いざ結婚を考えた時に仕事と家庭、子育てを両立するのは難しく退職した。(37歳 パートアルバイト)​
・子どもを育てながら朝から晩まで働く自信がない。子どもに対する手当が厚ければ、パートなどで働くのが理想。(25歳 公務員)​
・税金で給料はどんどん減るが、物価上昇したり、増税でお金がかかる。そのため仕事を続けるしかないが、保育園も高いし、子供の将来の学費等を貯金しながら育てられる程の余裕はない。(28歳 医療関係の専門職)​

8割が少子化について課題認識あり。産みたい人が産めない世の中との回答も。

少子化に関する自由回答では、日本の将来、自分たちの子供の未来を考えたときに、少子化により経済の低迷、社会保障制度の崩壊、国の衰退を危惧する声が多くありました。
一方、国の政策や時代の流れにより、少子化であることを受け入れ、産まないという選択をする人への理解を示す声も一定数見受けられます。産みたい人が悩まず産める世の中であるために、何が必要なのでしょうか。

自由回答(一部抜粋)

・ 税収や年金などの側面から、子供たちに今より重い負担がかかることが想像できるから。(32歳 会社員)​
・ 非常に良くないと思うが、正規雇用を減らして非正規雇用を増やしたり、増税をしたり、児童手当の所得制限など、結婚できない環境や国が率先して作ってきたので、こうなるのは当たり前だと感じる。(36歳 会社員)​
・ 日本の将来の人材不足。経済活動には働く若者が必要。(41歳 公務員)​
・ 少子化になっている理由が、産みたいのに産めないという理由なのは良くない(34歳 公務員)​
・ 少子化が続くと、納税者が減り、福祉を支えることができなくなってしまうと思うから。(26歳 教育関係の専門職)​
・ 物価が値上がりしても給料が上がらないので、少子化が進むのは理解できるが、このままでは年金の負担がどんどん増えていくと思う。(31歳 パートアルバイト)​
・ 子どもが減ると上の世代を支える人数が減るため困る。が、産む産まないも含めて個人の選択が優先されるべき。産みたい人が産めるような支援がないと思っている。(34歳 パートアルバイト)​
・ それぞれの家庭の状況があると思うので、良いとも悪いとも言えない。少子化の現象があるのは仕方がないことだと受け止めている。(38歳 専業主婦)​

少子化の1番の原因は「子育てにおける経済的な不安」、続いて「仕事と家庭の両立困難」

「少子化の1番の原因は」の問いに対し、「子育てにおける経済的な不安」が第1位でした。長い子育て期間において、出産費用から子供の教育資金など経済的な心配をする声が多数ありました。また、出産後も仕事を続ける方も多く、仕事と家庭の両立の不安を抱く方も多くいます。
さらに、近年の女性の社会進出により生活力あるの女性も増えたこともあり、結婚をしない、子を産まないという選択をする方など、時代の流れとともに価値観の変化も影響していると言えます。経済的な不安のみを解消すればよいものではなく、今の時代に合わせた制度設計や施策を行う必要があるのかもしれません。

自由回答(一部抜粋)

・ 子供の教育資金、自分達の老後資金を考慮すると、共働きでないと将来が不安。共働きとなると子供2人が限界だと思う。(30歳 会社員)​
・ 物価が上がっているのに、給料が上がらない。将来の資金計画が読めない。仕事復帰してちゃんと評価してもらえるか不安。(28歳 会社員)​
・ 自身が妊娠し、改めて妊娠、出産、子育てにはお金がかかることを痛感している。経済的な面からして晩婚化が進む、また未婚率が高くなるのも納得できる。(34歳 パートアルバイト)​
・ 働いても働いても手元にはそれほど残らない現実。 不妊治療も経験したけど、治療費も受診時間も取られる中で正社員では中々いられない。(33歳 パートアルバイト)​
・ 女性の社会進出による晩婚化、育児をしながらの社会進出の難しさ(どうしても男性に劣る)に加えて、インフレにも関わらず賃金が上がらなければ妊娠出産育児に慎重になるのもやむを得ない。(30歳 専門職)​
・ 自分の周囲も女性のキャリアアップで晩婚化が進み、そのせいで出産年齢が遅れている。自然妊娠の方は少なくなっていると思う。(34歳 専門職)​
・ 産休・育休取得後のキャリア形成について漠然とした不安がある。待機児童問題など仕事復帰や継続への不安要素も多いです。(31歳 公務員)​
・ 補助券があっても妊婦健診はお金もかかります。出産準備で自分のマタニティ用の服や赤ちゃんの服、オムツ、ミルク、細かいものを買いそろえるとかなりの金額になります。(34歳 自営業)​​

子育て世代に1番必要な取組は「児童手当などの経済的支援の強化」

政府が年頭に掲げた「異次元の少子化対策」。そのうちの柱となりそうなのが「児童手当の拡充」です。
前述の通り、少子化の1番の理由は「経済的な不安」でしたが、子育て世代が1番必要と思う取組も「児童手当など経済的支援の強化」でした。続いて「幼児教育、保育サービス、学童保育等の支援拡充」「育児休業制度の強化含めた働き方改革」の順となっています。
経済的な不安をなくすためには、経済的な支援強化も必要ですが、女性も働く時代だからこそ働きやすい環境整備(待機児童問題、働き方改革)、男性の育児参加など、総合的な支援が必要と言えます。

自由回答(一部抜粋)

・ 経済的援助があればベビーシッターなど利用して安心して預けながら仕事ができるという選択肢が増える(37歳 自営業)​
・ 子供をもっと欲しいと思っていても産まない背景には経済的な理由が大きいため また子育て世帯だけではなく子育てに関連する事業者(保育士さんなど)の待遇向上も併せて必要だと考えるため。(32歳 会社員)​
・ 産める人の産み控えを避けるには結局は手当を拡充させるしか無いのでは? 若い人達に多くの子供を産んで貰うため、金銭的に余裕がある人たちがもう一人産んでも良いなと考えられるようになるため(39歳 専業主婦)​
・ 現状、保育園に希望した年齢に入ることができないのではないかと不安。入れない場合、仕事を継続できない。(36歳 産休中)​
・ 保育園の3歳未満も無償化して欲しい 大学の費用も奨学金を世帯の子供の人数に応じて支援があると多子の世帯の将来的な不安が軽減されるのでは。(34歳 会社員)​
・ 本当の待機児童ゼロを目指して政策をしていただかないと、働けない。まずは経済的な不安を取り除くことが一番大事だと思う。(30歳 専業主婦)​
・ 産後1ヶ月間、夫が育休をとってくれたが、私は産後の身体的ダメージもありつつ、二人で一人の育児をするだけでも重労働だということを実感した。もっと様々なバリエーションの育児と仕事の働き方のバランスを模索してほしい。(35歳 専門職)​
・ 育児休暇中のリスキングを、と首相が仰っていたが、正直育児中にそんな暇はないと思う。それに、「貰えるお金が増える」ことになるかもしれないが、リスキングした後とかいう不確実性なものではなく、児童扶養手当など確実性なものがいいと思う。(24歳 会社員)​

まとめ

政府は、少子化対策として今後、「児童手当の拡充」をはじめとする様々な支援を行うことを示しております。​
子育て世代の約4割の方が、「産みたいけど産めない」現状であり、その理由は経済的な不安だけではなく、女性も働く時代だからこそ仕事と家庭の両立への不安、自分のキャリアの不安、晩産晩婚化など様々です。​
また、子育て世代の大半が少子化について課題認識を持っており、少子化による日本の未来、家族の未来、子どもたちの未来を危惧しています。​
産みたい人が安心して産めることできる。そのために、経済的な支援に加え、働きやすい環境整備、子育て世代以外の意識や風土の改革など、未来に繋がる社会全体を通した総合的かつ抜本的な国をあげての取組が急務ではないでしょうか。​

調査概要:「子育て世帯が思う少子化」に関する調査
調査主体:一般社団法人マザーアンドチャイルド協会
調査方法:ハーゼスト株式会社が提供する「Babyプラスアプリ」によるWeb調査
調査期間:202323日~同年210
回答者数:妊娠中または出産後の女性1353